実際に起こった電気事故/火災へのYMモデルの立場での見解
西仙台ゴルフ場太陽光発電火災(2024年4月)
太陽光発電は環境にやさしい。将来の電力供給の主役になることに異論はない。
将来を見据えて、太陽光発電はどんどん身近になっている。
しかし、太陽光発電の火災は怖い! 科学的な発生原因が未解明! 消火作業は大規模である
1.大規模な太陽光発電が原野に、山間部に、展開されている。
【国道475号線利府町付近。太陽光発電と稲作がソーラーシェアリング】
工夫すれば、環境対策だけでなく、経済的にも地域に貢献できるという。設置コストだけでなく、稲の日照不足での病害作対策や、支柱が邪魔になる農業機械の作業性など課題はあるのだろうが。

石巻日々新聞HPから
【遊休ゴルフ場に大規模太陽光発電所】
バブル時代に増えすぎ、スポーツもレジャーも多様化し、シニアのプレー人口が減ったゴルフ場(跡地)は、広い平坦地で日当たりもよく、アクセス(工事用)道路もあり、ある程度の電力配電がなされ、大規模な太陽光発電所に適している。
我が家の近くの里山にも;石巻オーシャンゴルフ場跡地
温泉を楽しみに出かける山間部にも;鬼首ゴルフ場跡地

2.身近なゴルフ場内の太陽光発電所で電気火災が発生。
出火場所や装置は明確。消防の対応は大規模。しかし、鎮火に22時間かかった。

3.消火に時間がかかった。自然鎮火を待っていた。風が吹いていたら!

【消防の出動態勢;新聞、ウェブ情報から】
- 仙台市消防局から上空偵察のためのヘリコプター1台、消防車36台と消防隊員157人。地域の消防団から消防車16台と消防団員55人が出動。10トンポンプ車も四台出動。
- 昼間はソーラーパネルは発電し続ける。大容量蓄電池も接続されていた。放水すると感電する恐れがあり、鎮火まで22時間がかかった。
- 山林に延焼すれば山火事になって手がつけられなくなるし、道路をはさんで大きな住宅地もある。
- ある消防隊員は「当日の風がもっと強ければ、大火になったかも!」と言っていた。
【事故数日後のゴルフ場キャディさんとの会話】
なぜ、こんなに多数の消防車が必要なの?
なぜ、もっとはやく消せないの?
大災害時に同時に多発したら、どうするの?
4.経産省では、重大事故とみなして、関係委員会で議論し、報告書を作成した。

事故原因に関して設置者のコメントがそのまま採用されている。
5.経産省の火災原因の調査は、設置者によるコメントを採用
;『PCS内部部品のコンデンサの故障』

仙台市消防局の調査も同じ!
10月11日 NHK宮城NEWS WEB
原因について仙台市消防局が調査した結果、太陽光パネルで発電した電流を交流電流に変換する装置にあるコンデンサーと呼ばれる電子部品が何らかの原因で劣化したことで過熱し、火が出たことがわかりました。
NITEの報告書から;
6.類似の事故が全国で増えている。原因不明が多い。

➡想定外の電流路での事故なので、アーク放電がかかわるとの推定
7.インバータ技術はメリットは多いが、最近の電力機器の事故はインバータ関連が多い。
消火作業の難しさ;太陽光発電も、インバータ技術も、常に、系統電力と結びついて機能する。

8.西仙台ゴルフ場太陽光発電所の事故原因を、"アーク放電" 研究者の立場で考える!

9.コンデンサ故障で太陽光発電のPCSで何が起こったか?
コンデンサ故障での漏洩電流をトリガとするアーク放電の発生を想定してみた。
太陽光発電システム内の多数のPCSの中の1台。突然に密封が破れ、下草に引火、拡大。PCS内は完全破壊。
【YMモデルでの現象の説明】
通電中のPCSのコンデンサが故障➡コンデンサに並列な向かい合う2つの導体(電極)間を漏洩電流が流れる
➡電極への漏洩電流の部分集中が起こり、金属表面が部分溶融すると、固液界面に電気2重層が発生する。
➡陰極の電気2重層からは電子、陽極の電気2重層からはイオンが放出され、アーク放電が始まり持続する。
➡アーク放電は電極表面を溶融温度(Cuなら約1000℃)に持続するので、金属溶融、絶縁物熱分解が続く。

事故報告書を読んで、強く感じていること。
事故原因に関して、コンデンサの故障が原因だととの設置業者の説明しか報告されていない。
事故の科学的な原因とは、コンデンサの故障が、どんな物理現象で火災に至ったかの解明が必要であろう。
原因解明は難しいだろう。だから、多くの仮説を立てて物理現象を検証すべきだと思う。
以下はその1例である。筆者らのアーク放電に関するYMモデルの仮説に基づく。
『PCS内のコンデンサが故障して、
電極間に漏洩電流が流れ、
その電流をトリガとして、コンデンサに並列にアーク放電が発生、持続して
密封されたPCS内では導体金属溶融と有機絶縁物の熱分解が起こり、
可燃ガスなどが発生し、
筐体圧力が上昇し密封が破れ、
大気の酸素に触れて燃焼し、下草の火事に至った。』
物理現象が想定できなければ、有効で経済的な対策も消火も難しい!
まず、設置業者などど議論したい!